01 — SECTION

概要

無所属とは祓部にも傭兵ネットワーク《Anonymous》にも属することができない者たちの総称だ。「属さない」のではなく「属せない」——ライセンスを取得できない事情を抱えた者、登録を拒まれた者、社会の網目からこぼれ落ちた者がここにいる。あらゆる勢力から必要とされ、同時に警戒される存在だ。

無所属の典型像

類型概要
装備店の主人討伐者に武器や装備を売る側。自身も腕が立ち、店を守るために怪異と戦うことがある
企業の用心棒傭兵ネットワークを通さず、企業や個人と直接契約して護衛を務める。免許は持っていることが多い
スラムの生存者無免許や偽造免許で活動している。怪異が湧くスラムで生き残るために戦わざるを得ない
元祓部・元傭兵組織を離れた理由がそれぞれにある。内部知識を持って独立した者は厄介な存在として扱われる
逃亡者国家・企業の育成施設から逃げ出した人間。別格の実力を持つことが多い

共通しているのは「組織に属さない」という一点だけであり互いの覚醒経緯を詮索しない不文律がある。

リトルクラン

スラムにはリトルクランと呼ばれる子供たちの寄り合いが存在する。親を怪異に奪われた孤児や行き場のない子供たちが互いに身を寄せ合い、生き延びるために集まった小集団だ。

  • 正規の訓練を受けていないが、怪異と隣り合わせの生活の中で実戦的な勘を身につけている
  • 大人の討伐者が面倒を見ている場合もあれば、子供だけで回している場合もある
  • 祓部からは保護対象として扱われるが、実態の把握は追いついていない

ここでは装備スタイルと背景を複合した具体的な無所属の例を挙げる。

02 — SECTION

無所属の生態

情報と信頼

無所属の間には組織のような指揮系統がない。代わりに信頼と情報の交換を基盤とした緩やかなネットワークが存在する。信頼できる無所属を紹介してもらう・危険な情報を共有してもらう・装備の調達先を教えてもらうといった関係が命綱になる。

2034年の白銀の廃線事件が現在の無所属コミュニティの核を作った。あの事件で祓部・傭兵・無所属が同じ現場で共闘した経験が今のネットワークの原型になっている。

装備の入手

無所属の装備入手ルートは大きく三つだ。一つは鴉羽技研のような業者への依頼。一つは廃棄・鹵獲・拾得による入手。一つは自力での改造と組み立てだ。いずれも一長一短があり装備の品質と信頼性は個人差が大きい。

法的な立場

無所属の討伐行為は法的にグレーだ。免許を持っていれば討伐自体は合法だが、組織の後ろ盾がないため無許可の魔導具使用・不法侵入・器物損壊などで問われるリスクがある。無免許・偽造免許の場合、討伐行為そのものが犯罪として問われる。祓部は無所属を黙認している場合もあれば積極的に排除しようとする場合もある。担当者と状況次第だ。

03 — SECTION

無所属の例

架見・静流(かみ・しずる)【NPC例】

項目内容
二つ名「静水(しずみ)」
覚醒パターンショック覚醒型
背景元一般人・被害者遺族
主要装備全装身型(鴉羽技研経由の朱鷺崎式礼装・非正規品)
侵食率なし(魔法使用者)

背景

五年前の怪異事件で弟を失った。事件は公式にはガス爆発として処理されたが静流は真実を知っていた。調べるうちに怪異の存在を確信したが話しても誰にも信じてもらえなかった。孤独の中で独自に怪異の知識を蓄積し装備を入手し討伐者としての活動を始めた。

先天的な素養を持っていたことが後から判明した。独学で魔法を習得したため安全管理の知識が不十分であり大きな魔法を使うたびに周囲への影響を気にする習慣がある。

装備と戦闘スタイル

鴉羽技研を通じて入手した朱鷺崎式礼装の非正規品を使用している。正規品ではないため一部の機能が不安定だが古い怪異への干渉能力は本物だ。魔法を主力として全装身型の防御力と組み合わせる戦闘スタイルを持つ。

全装身型を使っているため都市伝説化のリスクが高い。「白い鎧の人影」として目撃情報が断続的に上がっており祓部の新怪班がマークしている。

内面と動機

弟の死の真相を追うことが最初の動機だったが活動を続けるうちに被害者を出したくないという気持ちが動機の中心になってきている。弟の件の真相には近づいているが完全には解明できていない。

一般人から無所属討伐者になったという出自から「なぜ戦うのか」という問いに最もシンプルな答えを持つキャラクターだ。

ドラマの種

  • 弟の死の真相が当初の想定より複雑な事情を含んでいると判明する
  • 自分が都市伝説化していることを知り怪異発生源になるリスクと向き合う
  • 独学の魔法が引き起こした副次的な怪異の後始末をする
  • 同じ被害者遺族と出会い動機と行動の正しさを問われる

獅子倉・鉄也(ししくら・てつや)【NPC例】

項目内容
二つ名「解体屋(かいたいや)」
覚醒パターン接触覚醒型
背景元蒼鉄機工エンジニア
主要装備半装身型(自作・出自不明の特殊部品混在)+独立型複数機
侵食率あり(特殊素材使用)

背景

蒼鉄機工の技術者として長年働いていたが特殊素材の研究中に覚醒した典型的な接触覚醒型だ。研究中に素材の性質に引きずられる形で異能が発現し自分の変質に気づいた。

会社への不信が決定的になったのは闇研究部署の存在を知った時だ。告発を試みたが握りつぶされ降格・異動という圧力をかけられた。自ら退職して無所属になった。現在は蒼鉄機工の内部情報を持つ厄介な存在として企業側からマークされている。

装備と戦闘スタイル

蒼鉄機工での経験を活かした自作の半装身型を使用している。純粋な技術者としての知識で組み立てた装備だが出自不明の特殊部品を一部に組み込んでおり異能の感知能力を拡張する機能を持つ。独立型機体の設計と運用も得意で複数機を同時制御する。

怪異に対する感知能力が高く調査・解明プロセスで優れた成果を上げる。一方で侵食による感情の変質が進んでいる。「分析している」と本人は言うが共感能力が薄れてきているという自覚がある。

内面と動機

蒼鉄機工への怒りが動機の一部だが企業を壊したいわけではない。危険な製品で誰かが傷つくことへの義憤が続けている理由だ。自分の侵食については冷静に受け入れている。止まる選択肢はないと判断しているからだ。

ドラマの種

  • 蒼鉄機工の闇研究部署の証拠を持っており利用価値と危険が表裏一体
  • 侵食による感情の変質と技術者としての判断力の間のバランス
  • 祓部技術部の術式士と技術的な議論を通じて意外な連帯が生まれる
  • 自作装備の特殊部品が予期しない反応を起こす

夜半・音羽(よわ・おとは)【NPC例】

項目内容
二つ名「夜鶯(よなき)」
覚醒パターン接触覚醒型→異能発現
背景元神社の神職・社家の末裔
主要装備武装型(神道的道具+特殊な武器一本)
侵食率あり(特殊素材使用)

背景

地方の小さな神社の神職の家に生まれた社家の末裔だ。先祖代々口承で伝わってきた怪異対処の知識を持って育った。祓部への勧誘を断り続けた末に神社が廃社になり拠り所を失った。

廃社の処理中に蔵の中から先祖が封じていた何かを発見した。封じていた経緯と意図を記した文書も同時に発見したが文書は不完全で全ては読み解けなかった。この封じられていたものとの長期接触で異能が発現した。

無所属として活動しているが祓部への不信というより「組織の方針に縛られたくない」という意思が独立の理由だ。

装備と戦闘スタイル

神道的な道具(御幣・祓串・塩・酒)を実際の怪異対処に使用する。祓部の古怪班と近い手法だが民間に伝わる口承に基づく独自の変奏がある。怪異のルールに干渉する際の精度が高く古い怪異に対して特別な有効性を発揮する。

先祖から受け継いだ特殊な武器を一本だけ携行している。使うたびに侵食が進むことを知っており使用を極力控えている。

内面と動機

先祖から受け継いだ「怪異と向き合う」という使命感が動機の中心だ。神と怪異の境界線について深く考えており成仏に近い解決を直感的に目指す傾向がある。音羽が「成仏」という言葉を知らないまま同じ結果を目指していることが祓部の封印派との共鳴ポイントになる。

廃社になった神社の跡地が禁足地になりかけているという情報が入っており対処すべきかどうか迷っている。

ドラマの種

  • 不完全な文書の残りを探す調査が物語の軸になる
  • 廃社跡地の禁足地化への対処が個人的な因縁と絡む
  • 祓部古怪班との知識の交流と相互理解
  • 特殊な武器の使用を強いられる極限状況
  • 先祖が核素材を封じていた本当の理由が明らかになる

鏑木・紺(かぶらぎ・こん)【NPC例】

項目内容
二つ名「影踏み(かげふみ)」
覚醒パターン実験覚醒型(祓部内部実験・非公式)
背景元祓部・見習祓士時代に非公式実験の被験者にされた
主要装備異能(直接行使)+武装型(最小限の魔導具武器)
侵食率あり(異能使用)

背景

祓部の見習祓士だった時代に術式士による非公式な実験の被験者にされた。素養強度が異常に高かったことが実験の対象にされた理由だ。実験は祓部の公式承認を得ておらず術式士個人の研究だったが組織的な黙認があったとも疑われている。

実験によって素養強度がさらに上昇したが身体への代償も生じた。真実を知った後に組織への不信が決定的になり逃亡した。現在は祓部が「回収すべき存在」としてマークしている。

装備と戦闘スタイル

異能の直接行使が主な戦闘手段だ。実験の影響で怪異の気配と構造を感知する能力が突出して高い。解明プロセスにおいて「何かがおかしい」という感覚の精度が他の追随を許さない。改造個体・別個体の判定を誤らないという評判がある。

魔導具への依存を最小化している。祓部の標準装備との相性が悪く使うと逆に感知能力が鈍るためだ。

内面と動機

祓部への憎しみと怪異を止めたいという使命感が共存している。組織への不信から生まれた孤立傾向があるが白銀の廃線事件のネットワークを通じて信頼できる無所属の繋がりを少しずつ作っている。

実験を行った術式士が現在も祓部に在籍しているという情報があり接触を恐れている。同時にその術式士が何を研究しているのかへの疑念が拭えない。

ドラマの種

  • 祓部に「回収」されそうになるたびに逃亡・回避する緊張感
  • 実験を行った術式士との最終的な対峙
  • 怪異感知能力の高さが物語上の鍵になる場面
  • 祓部を完全に信用できないまま現役祓士と協力しなければならない状況

廻り・双葉(めぐり・ふたば)【NPC例】

項目内容
二つ名「双眼(そうがん)」
覚醒パターンショック覚醒型→異能発現
背景元新聞記者・情報統制の被害者
主要装備独立型複数機+武装型(軽装)
侵食率なし(魔法・異能どちらも使わない)

背景

地方紙の記者として怪異関連の事件を追っていた。ガス爆発・集団パニックとして処理される事件の不審点を調べ続けた末に祓部の情報統制の実態に気づいた。取材を続けると記憶操作を受けた。しかし記憶操作が完全には機能しなかった。断片的な記憶が残り「何かを消された」という確信だけが残った。

確信を手がかりに独自に調べ続けた末に怪異の存在を再確認した。現在は怪異の情報収集と記録を専門とする無所属討伐者として活動している。

記憶操作を完全に受け付けなかった理由は不明だ。本人は「意地だ」と言っているが何か特異な素質がある可能性がある。

装備と戦闘スタイル

魔法も異能も使わない珍しい無所属だ。独立型機体の運用と情報収集・分析に特化した戦闘スタイルを持つ。戦闘より情報収集が強みであり調査プロセスにおいて独自のジャーナリスティックな手法で証拠を集める能力が高い。

侵食率を持たないため長期的な運用でのリスクが最も低い。一方で純粋な戦闘力は無所属の中でも低い部類だ。

内面と動機

怪異の存在を記録し広く知らせることへの使命感が動機だ。同時に「誰かが記録しておかないと全部なかったことになる」という強迫的な意識を持っている。情報統制の実態と怪異の真実を社会に知らせることが最終的な目標だが手段が正しいかどうかについては自問を続けている。

記憶操作を受けた経験から祓部への不信が深い。一方で現役祓士の中にも情報統制に疑問を持つ者がいることを知りつつある。

ドラマの種

  • 記録者としての使命と仲間の安全のトレードオフ
  • 記憶操作が完全に機能しなかった理由の解明
  • 怪異の真実を社会に公表することが新たな怪異を生む可能性
  • 情報統制に疑問を持つ現役祓士との秘密の協力関係
  • 自分が集めた記録が不明な勢力に狙われる

荒垣・煌(あらがき・きらめき)【NPC例】

項目内容
二つ名「煌骨(こうこつ)」
覚醒パターン接触覚醒型
背景元鉄蟲隊パイロット・侵食により離脱
主要装備戦闘用搭乗型(鉄蟲隊からの持ち出し機・改造済み)
侵食率あり・高侵食域(60〜70%)

背景

鉄蟲隊の元エースパイロットだ。雷鳥機動シリーズとの長期同調によって侵食率が高侵食域に達した。鉄蟲隊は侵食を知りながら任務を続けさせていたが煌はデータ隠蔽の事実を知った後に機体を持ち出して離脱した。

現在は雷禽重工と鉄蟲隊の両方から機体の返還を求められている。煌は返す気がない。機体はすでに長期同調によって自分の一部になっているという感覚があるからだ。

装備と戦闘スタイル

持ち出した雷鳥機動シリーズの機体を独自に改造して運用している。長期同調によって機体との一体感が異常なほど高くなっており通常のパイロットには不可能な動きができる。一方で機体から離れると明確な喪失感がある。機体依存が深刻だ。

高侵食域にあるため暴走のリスクを常に抱えている。戦闘中に感情が昂った時の制御不能状態への恐れが戦闘スタイルに影響している。

内面と動機

雷禽重工と鉄蟲隊への怒りが動機の起点だ。しかし活動を続ける中で「侵食が進んだ自分がこれからどうなるか」という問いが中心になってきている。暴走を恐れながらも力を使い続けることしかできない矛盾を抱えている。

機体との一体感が侵食の結果なのか長期同調の結果なのか自分でも区別できない。

ドラマの種

  • 機体依存と侵食の進行が絡み合う心理的な葛藤
  • 雷禽重工・鉄蟲隊の追手との攻防
  • 高侵食域での暴走リスクと戦い続ける意思の間の綱渡り
  • 機体が完全に怪異化した場合の最悪のシナリオへの自覚
  • 侵食を受け入れるか抗うかを問われる決断の場面
04 — SECTION

無所属キャラクターの設計指針

共通する強み

  • 組織の方針に縛られない行動の自由
  • 複数の組織と状況に応じて協力できる立場
  • 独自のルートで入手した装備・情報・知識
  • 互いの覚醒経緯を詮索しない不文律による緩やかな連帯

共通する制約

  • 法的保護がない
  • 安定した収入・補給・後方支援がない
  • 組織の情報ネットワークにアクセスできない
  • あらゆる勢力から警戒される

ドラマの核

無所属のキャラクターが最も問われるのは「なぜ組織に入らないのか」だ。

組織への不信・過去の傷・自分の力の制御不能・誰かを巻き込みたくない・自由でなければできないことがある。それぞれの理由がキャラクターの行動と選択を規定する。組織に入るよう誘われた時に何を答えるかが、そのキャラクターの核心を示す。

無所属の六例まとめ

名前二つ名覚醒背景装備侵食
架見・静流静水ショック被害者遺族全装身型(NPC)なし
獅子倉・鉄也解体屋接触元蒼鉄機工半装身型+独立型あり
夜半・音羽夜鶯接触社家末裔武装型(神道)あり
鏑木・紺影踏み実験元祓部異能直接行使あり
廻り・双葉双眼ショック元記者独立型なし
荒垣・煌煌骨接触鋼の肉体戦闘用搭乗型(NPC)あり・高